900年以上の歴史を誇る山形鋳物から、先端の精密機器に至るまで、「ものづくり」の文化が根付く山形県において、その熱量が特に高いのが米沢市だ。この地で100年以上にわたり、地域とともに歩んできたのが「精英堂印刷株式会社」である。同社の大きな特徴である「水なし印刷」の大量生産技術は、今や業界の先駆けとして圧倒的な存在感を放っているが、その導入当初、社内には葛藤があったと代表の安部は振り返る。
対談 with 精英堂印刷株式会社
「企業」と「金融機関」が描く、
やまがたの未来
企業の想いと、それを支える山形銀行。
それぞれがどのような未来を思い描き、
どのように地域の未来をつくっていくのか。
今回は山形県において歴史ある企業の一つ、
精英堂印刷株式会社の
代表をお招きし語り合いました。
精英堂印刷株式会社
代表取締役社長
安部 幸裕
山形銀行
米沢支店
髙橋 義人
精英堂印刷株式会社
1915年に米沢市で創業。環境に配慮した水や空気を汚さない独自の「水なし印刷」技術を活用したパッケージ印刷に強みを持つ。その高い加工技術は日本屈指かつ先駆者的存在であり、山形から全国、そして世界へ価値を提供している。
100年企業が挑む変革。 業界の先駆け「水なし印刷」の軌跡
「私たちが水なし印刷を導入したのは1999年のことです。バブル崩壊後の余波が残り、『高い生産性こそが正義』という考えが業界を支配していた時代です。一時的とはいえ生産効率に影響を与える取り組みに、社内からも懐疑的な声が上がるのは当然でした」
それでも精英堂印刷は、技術の研究と向上を止めることはなかった。そこには、創業以来脈々と受け継がれてきた会社のDNAがあったからだ。
「オーダーメイドの提案」で、 地域の企業に寄り添う山形銀行
山形銀行 米沢支店に勤務する髙橋は、精英堂印刷の担当を引き継いだ当時の心境をこう述懐する。
「県内でも非常に高い知名度と技術力を誇る精英堂印刷さまを担当できると聞き、とてもワクワクしたことを覚えています。同時にメインバンクとして果たすべき役割を自らに問い、改めて『山形銀行だからこそできる提案、私だからこそ伝えられる価値とは何か』を深く考えました」
高橋が大切にしているのは、個別の企業と徹底的に向き合うという山形銀行のスタイルだ。企業が抱える課題やニーズは千差万別であり、既存の商材を当てはめるだけでは本質的な解決には至らない。企業一社ごとに寄り添い、オーダーメイドの提案を追求する。その姿勢こそが、長年にわたって多くの企業から信頼を選び取ってきた理由である。
安部代表は、山形銀行との関係性をこう語る。
「私たちが常に実感するのは、徹底した『マーケットイン』の発想です。髙橋さんの提案は、常に当社の本質的な成長を願ってくれていることが伝わってくる。また、単なる一企業の利益にとどまらず、『山形県経済全体をどう活性化させるか』という高い視座を持って議論ができるからこそ、私たちは心から信頼して相談ができるのです」
精英堂印刷と山形銀行の間に築かれた強固な絆。それは、互いの「想い」と「誠実さ」の積み重ねから生まれる、地域経済を支える大きな原動力となっている。
自社・自行の枠を越えて描く、 山形を愛するものたちの未来
山形銀行が掲げる「山形県全体の経済活性化」というミッション。その大きな強みは、広範なネットワークとグループ会社を活用した多彩なソリューションにある。安部代表は、銀行と自社の知見を掛け合わせることで実現したい未来について、こう語る。
「山形県内の製造業をはじめとする多種多様な企業と、山形銀行の皆さんがより深く人材交流できれば、素晴らしい未来が描けるのではないかと考えています。銀行が持つ知識やスキルを、製造現場での品質管理やPDCAサイクルの構築に役立てる。それによって企業の業績が改善するだけでなく、銀行員の皆さんは現場の課題を肌で知るプロフェッショナルとして成長し、より高度なソリューションを生み出せるようになるはずです。そうした好循環が、山形県全体を強くしていくのだと確信しています」
この安部代表の構想に対し、髙橋は力強く応じる。
「人材や企業のマッチングは、今まさに山形銀行グループとして注力している領域です。以前、安部社長からブランディングやマーケティングのご相談をいただいた際も、最適なソリューションを持つ県内のベンチャー企業をご紹介し、高く評価いただきました。経営課題は企業さまごとに異なり、その深さも違います。一つひとつの悩みに寄り添い、最適な解決策をコーディネートしていくことこそが、地域の未来を強くすることにつながると信じています」
自社、あるいは自行の枠を越え、互いに山形の未来を見据えて熱く語り合う両者。そんな「山形を強くしたい」という共通の意志が、地域の明日をより明るく照らしていく。
米沢から世界へ。 やりがいと充実した私生活が叶う場所
精英堂印刷の経営者として、一企業を超えた「山形県の未来」を見据える安部代表。実は、その広範な視座は、かつて山形銀行で支店長を務めた経験に裏打ちされていた。東日本大震災後、国の関連機関と共同での印刷会社の再生支援や銀行業務を離れた地方創生プロジェクトへの関与、そこで得た業界知見と、支店長時代から続いた精英堂印刷との信頼関係が、現在の道へとつながったのである。
「いくつものご縁が重なり現在に至っていますが、山形県の魅力を発信し続けたいという想いは、当時から何一つ変わりません。当社を含め、山形県には独自の技術で輝く企業や、若者の目にも魅力的に映る素晴らしい事業がたくさんあります。通信技術が発展した今、米沢に拠点を置きながら東京や海外と仕事ができるようになり、スケールの大きな仕事に携わるやりがいも増しました。自然豊かな環境で充実した仕事に打ち込み、私生活も豊かに過ごす。そんな山形ならではの働き方の魅力を、一人でも多くの方々に伝えていきたいですね」
この言葉を受け、髙橋は自身の就職活動を振り返りながらこう語る。
「安部社長のおっしゃる通り、山形には皆さんが想像する以上に多種多様なフィールドがあります。特に製造業に関しては東北有数のポテンシャルを誇り、その中核を担うのがこの米沢市です。私自身、今こうして山形銀行で働いていることに大きな幸せを感じていますが、もし就職活動の際に地元の企業の真の魅力を知っていたら、また別の未来を描いていたかもしれません。それほどまでに、この街の企業には無限の可能性がある。そのことを、私も求職者の皆さんに全力で伝えていきたいと思っています」
米沢市でひときわ強い光を放ち続ける精英堂印刷。代表の安部が大切にする「利他の精神」は、確かな技術と強い組織の礎となっている。その精英堂印刷を支え、ともに歩む山形銀行との絆。それは、互いに信じる「山形の明るい未来」が完全に重なり合っているからこそ、揺るぎないものとして存在している。